こんにちは。家事シェア研究家の三木(Twitter)です。
今日は、「男性の育休は家庭にとって、企業にとって両立を実現する最大のチャンス」という話をしたいと思います。 と、言うのも。育児介護休業法の改正が行われ、企業内での男性育休への取り組みが活性化していくから。実際、企業にお勤めの方は社内での取り組みが新しくなったのを感じているかもしれません。
この改正、ひらたくまとめると「企業が育休の周知をしなくてはならなくなった」ということです。大企業に関わらず中小企業であっても「うちは男が育休なんて無理だよ」と言えなくなった。
つまり「もう子どもも大きくなったし、育休関係ないな」という人も、これからは育休の当事者としてではなく、若い世代をサポートする立場として育休と関わっていく必要が出てきたのです。
と、言うことで。
今回は少し趣向を変えて、改正のポイントと、男性の育休がどれだけ家族の命を守る役割を果たすかなどについて書いていきます。
※この記事は2022年7月に書いた情報を、2023年11月現在版にアップデートした内容となっています。
▶ 男性育休は広まってるの? 広まってないの?
厚労省の資料によると、男性の育休取得率は12.65%。 グラフの上がり具合を見ると、一気に急増しているように見えます。が、こちら。
ノルウェー、スウェーデン、ドイツなどの諸外国と比較してみると日本の男性育休取得率がまだまだ低いことがわかります。
でも、こうしたグラフを見ると思うんです。
「他の国の育休制度が、日本よりずっといいからでしょ?」と。
だから、それをもっと良くするための育児介護休業法改正じゃないの?と。
じつは、それはちょっと違います。 今回の改正のポイントはそこじゃない。そして、すでに日本の育休制度はめちゃくちゃいい制度なんです。
▶ じつはヤバいくらい魅力的!日本の育休制度の魅力
意外と考えたことないと思いますが、じつは日本の育休制度って世界的に見てもすごく魅力的。だから、本当に取得しないなんて超モッタイナイんです。
ではその魅力を2つご紹介します。
① 給付金でほぼ9割の収入が半年も保証される!休業期間の保証世界No1!
② 給付金を保証してもらえる最大期間1年!保証期間世界No1!
① 給付金でほぼ9割の収入が半年も保証される!休業期間の保証世界No1!
「育休取ると、収入が減っちゃうから困る」 「収入が減るくらいなら、休まないで働いていて欲しい」
そんな風に思って、夫婦で「じゃ、夫は育休とらなくていいか」と決めてしまうことも多いようですが、これはモッタイナイ。
育休中は実質手取り額の8〜9割が保証されるようになっているんです。
どういうことか見ていきます。
このグラフは最大限の育休給付金の諸外国との比較を示した図です。 これで見ると、日本は67%給付となります。
つまり、お給料の67%まで保証するよ! ということです。
「8〜9割って言ってたのに! 7割切ってるじゃないか!!!」
いえ、ちょっと落ち着きましょう。 じつは育休中は社会保険料が免除になるんです!
収入によって差はありますが、おおよそ額面月収の14〜16%程度を支払っているのです。これが免除になる。
(※ 賃金月額の上限は44万9700円となり、育児給付金の上限は30万1299円(6ヶ月以降は22万4850円))
なので、手取りで見ると8〜9割が保証されるということになります。
「でも、ノルウェーやポルトガルはそもそも100%じゃないか。そりゃその方が育休取得率高いのは当然だよ…」
おっと。本当に魅力的なのはここからです。
このグラフが世界No1のポイント。 この67%給付(手取り額は8〜9割保証)をもらえる期間がめちゃくちゃ長いんです。
その期間、おおよそ6ヶ月間。
給付金でほぼ9割の収入が半年も保証される! これはもう、世界No1の保証と言えると思います。
② 給付金を保証してもらえる最大期間1年!保証期間世界No1!
最大限給付だって6ヶ月と、最長を誇っていましたがそれ以降もすごい。 なんと12ヶ月まで50%の保証が支払われるのです。
ざっとまとめると、
6ヶ月間は67%が雇用保険から育児休業給付金として支払われる! (※所得制限あり 賃金月額上限44万9700円程まで) それ以降は12ヶ月まで50%が支払われる!
というすごい制度なのです。
▶ それでも、男性が育休をとらない理由って?
制度が整っていても、それだけでは男性が育休を取得することはない。 残念ながら、これまでの日本はそれを証明するかのように取得率が低いままでした。
じゃ、なんで低いのか。
その理由も色々ありますが、1位〜5位を抜粋してみました。
※ 出典:ミドル2000人に聞いた「男性育休」実態調査―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―
まず5位の「収入」について。 これは手取りのほとんどが保証されるんだよ、ということを知らないために起こってしまった誤解です。 つまり「収入が激変するから」という課題じゃなくて「どのくらい保証されるのか知らない」という課題とも言えます。
今回の、育児介護休業法の改正。 これは、この1〜5位の「取らなかった理由」を打破するための改正とも言えるのです!
▶ 育児・介護休業法の改正 3段階、5つのポイント!
今回の改正は、令和4年4月から3段階に分けて少しずつ施行されています。 漢字ばっかり、難しげな言葉が並んでいますので、超簡単に言い換えてみたいと思います。
※ STEP3は、1000人以上の企業の育休取得情報の公開義務、なので今回は特に触れません。
▶ STEP1 男性も育休取得しやすくなるための準備を企業がちゃんとやりましょうね!
① 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化 ② 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
どういうことかと言うと「男性も育休取得しようって、企業がちゃんと伝えてね!」ってことです。
そのために企業は、 ・研修やってね ・相談窓口つくってね ・自社の事例をちゃんと発信してね ・育休への方針をちゃんと伝えてね
この中のいくつかをやりましょう。ということです。
これってつまり、育休を取らなかった理由の2位と3位。 2位:会社で育休制度が整備されてない 3位:取得しにくい雰囲気
を打破していくための制度とも言えます。
▶ STEP2 仕事や家庭の事情に合わせて、柔軟に取得できるようになった!
そして、この10月からはじまるのが「産後パパ育休」です。
特徴は2つ。
① 男性も産休(期)が取れるようになる! ② 育休取得のパターンが増えた!
です。
① 男性が産休!?
正確には産休ではありませんが。 出生後から8週までの期間に分割して2回まで取得できるようになるのです。
これまでもこの時期に育休を取得することはできましたが、育休とは別に、しかも2回取得可能になるということで、柔軟度がかなりUPします。
この時期にパパが育児にしっかりコミットすることは、本当に大切なことです。
孤育て、ワンオペ育児。 この言葉は、ただひとりで育児をしてるってことを指すのではありません。
とても悲しい調査結果になりますが、産後1年未満の母親の死因の第一位が自殺とのこと。その原因として挙げられているのが、産後うつです。
「赤ちゃんがかわいいから幸せ」 これは確かにそうかもしれません。でも、育児を楽しむには時間、気持ち、身体のすべてに「ゆとり」が必要です。そのゆとりの中に、幸せが入ってくる。これは乳幼児期に限らず、育児はずっとそうだと思っています。
産後うつ、と診断されていなくても。 産後はホルモンの急激な低下や、寝不足、ひとりで育児をすることへの不安や負担などで「辛い」と感じることは珍しくありません。
そんなときに、やはりパートナーの存在は大きいのだと思います。
② 夫婦で育休を交代できるように!
そして、育休取得のパターンが増えたことも改正の大きな特徴。 この、夫婦ともに分割して2回取得可能になる、という育休の分割取得。
パパだけじゃなく、ママのキャリアの上でも大きなメリットになると思っています。
育休は「ママが1年休み、パパは短い期間スポットで休む」というのがこれまでの王道でした。 でも、今回の改正で「パパとママが話し合って、仕事の調整をし合って、交代で育休を取り合う」ということが可能になります。
これは、めちゃくちゃ大きなことで。 「夫婦で育児をする」ができる枠組みができたということだと思うのです。
▶ 柔軟な育休は、業務効率化のチャンス
柔軟な育休取得のパターンは、家庭にとってだけのメリットではありません。 企業にとっても業務効率化のチャンスとなり得るのです。
病気や事故と違って、育休は取得時期まで1年近くの猶予期間があります。 これけの時間があるのだから、その間に業務の棚卸しや引き継ぎ、
▶ 育休を当たり前にしよう!
いまはまだ14%の男性の育休取得率。 でも、改正が行われ、企業は男性にも育休取得を進めていかなくてはならなくなりました。
企業にとって、そして家庭にとって。 この改正は大きなチャンスだと思います。
これから育休を取る人たちも。 育休を取る人たちをサポートする立場の人たちも。
この改正について、たくさんの人に知ってもらえたらと思います。
今日も読んでいただき、ありがとうございました。 みなさんの家庭が「ただいま!」と帰りたくなる家庭であり続けますように!
三木智有