こんにちは。家事シェア研究家の三木です。
最近では「いっさい家事も育児もやらない夫」というのは、だいぶ見かけなくなりました。10年前くらいは、やらないことを誇ってるようなパパさんも、たまにお見かけしましたが。時代は流れているのだなと感慨深く思います。
とは言え、東京都の調査を見てみるとコロナ禍で在宅ワークが増えたにも関わらず男性と女性の家事時間ギャップはかなり大きい様子。
※ 図参照:https://www.fnn.jp/articles/-/333115
ぼくは以前、内閣府の「男性の暮らし方・意識改革のための専門調査会」の委員として「どうしたら男性の暮らし方って変わるのかな?」という国の会議に参加していたことがあります。
その時にもお話したことで思っていることがあります。 それは、男性の家事時間を「長く」することにばかり話題が向きがちだけど、問題は男女の家事時間ギャップなんじゃないかということです。
今日は、ぜひ家事時間が少ないパパに意識して欲しい「家事の巻き取り方」について書いていきます。
▶ 夫が家事するほど、妻が楽になるというのは幻想だった!?
夫婦の家事時間ギャップとは、やっている家事時間の差のことです。
先程の図で言えば、男女で5時間20分の家事育児時間の差があるよということ。 で、「ギャップを小さくすることを考えないとダメじゃない?」と言うと「男性の家事時間が伸びたら女性の家事時間も短くなるんだから、男性の家事時間アップを考えるのが大事!」と言われてしまいます。
だけど、本当にそうでしょうか? じつはこんな調査結果があります。
① のグラフは「夫は家にいるほど家事やってる!」を表しています。 ② のグラフは「夫が家にいると妻の家事時間は長くなる!」を表している。
本当なら、夫は家にいるほど家事をしているのだから、その分妻の家事時間は短くならなければおかしいんです。それなのに、「夫は家事がんばる」「妻はもっと家事がんばる!」と家の中の家事時間がググッと長くなってしまっています。
これは10年ほど前の調査結果なのですが、最初に見た調査でも似たような結果が見て取れます。
最初に見たのと同じグラフですが。この調査は「コロナ禍で在宅が増えたけど、家事育児はどう変わったの?」を調べているんです。
で、結果だけ書くと男性は1分家事育児時間が伸びて、女性は20分増えているんです。男性が在宅していると、女性の家事時間は減ることなんてなくて、増えてしまう。
ちょっと退屈な調査結果の話が続きましたが、これを自分の家庭に置き換えてイメージしてみてください。
だいたい調査通りだなって思うでしょうか。 それとも、うちはパートナーがいてくれたほうが圧倒的に楽になるなぁと思うでしょうか。
家事シェアで実現させなくちゃいけないのは「ワンオペよりツーオペの方が家事も育児も超楽ちんなんだよね」という状態です。
では、
① なぜパートナーが家にいると忙しくなってしまうのか?
② どうすればワンオペよりツーオペの方が圧倒的に楽! になれるのか?
について考えてみます。
▶ ① なぜパートナーが家にいると忙しくなってしまうのか?
家事ってじつは、マイナスになった状態をゼロに戻していく作業がほとんどです。
汚れたから綺麗に掃除する。散らかったから片付ける。 お腹が空いたからごはんを用意する。なくなったから補充する。など。
家事が嫌い、モチベーションが上がらないっていう気持ちは「やってもやってもマックスが0だから」というせいでもあります。掃除するたびに、家が新築のように綺麗になるわけじゃない。元の場所に物を戻したところで、インテリアが劇的に映えるようになるわけじゃない。
がんばっても所詮ゼロか、というのは気持ちとしてはなかなかしんどいかもしれません。
そして、このゼロに戻していく作業。 当然、マイナスが大きければ大きいほど大変で面倒なものになります。
逆にマイナスが小さければそれだけ楽に家事を終えることができる。
つまり家事を楽しようと思うとこのマイナスをいかに増やさないか、というのも大事なポイントになってきます。
さて。 では、パートナーが家にいると家事が大変になってしまう人と、パートナーがいてくれたほうが家事が楽になる人の違いはなんでしょうか。
それは、自分が生み出す家事のマイナス以上に家事をこなしているかどうかです。
じつはこれ。最低限の家事シェアのマナーだとも言えます。
使い終わったトイレットペーパーを交換せずにそのままにしておく。 食べ終わった食器を片付けない。「あれ取って、これ取って」といちいちお願いする。ソファに洋服を脱ぎっぱなしにしておく。などなど。
そうした細かな家事のマイナスが、家族の家事の手間を大幅に増やしていることがあります。
たとえ料理ができなくても、掃除をする時間がなくても、洗濯を任せっぱなしにしていても。こうした小さな家事のマイナスを増やさず、自分のことをちゃんと片付けるだけで、家事を担っている人の手間は大幅に省くことができます。
家に人がいれば、家事のマイナスは増えていきます。それは家事が苦手とかそういうことはまったく関係ありません。 でも、大人よりも子どもの方が家事のマイナスをたくさん増やしますよね。 それは子どもの方が散らかしたり、出しっぱなしにしたり、汚したりするから。 同じように、自分のことを自分で片付けられる大人と、散らかすばかりで片付けてもらうのが当たり前になっている大人とでは、一緒に暮らす家族の負担は大きく差が出ます。
まずは、自分がどんな家事のマイナスを増やしてしまっているか。 そのことを自覚するのが、家族に手間をかけない方法のファーストステップになります。
▶ ② どうすればワンオペよりツーオペの方が圧倒的に楽! になれるのか?
「家事のマイナスを増やさない」は、あくまでも家族にかける余計な手間を最小限に抑える方法です。
でも、ワンオペよりツーオペの方が楽! は、もう一歩進んだ家事シェア。
それはどうやってやればいいのか。
とても簡単です。家事をやる前に、パートナーに一言こう聞いてみてください。
「このあと、やろうと思ってることって何?」
ニュアンスが難しいのですが、「何かやることある?」「手伝うことある?」はダメなんです。 やることが「ある」か「ない」かを聞くのではありません。 「何」をしたら一番この後の家事がはかどるのかを確認するのがポイント。
また、この質問は「家事の全体像を把握できていない人」がするものです。 家事に主体的に取り組んでいる、夫婦で同じくらいやってる、という人は次に何をしなくちゃいけないかは分かっていると思います。
分かっているなら、聞く必要はありません。どんどん進めるだけです。 「自分なりに考えてやってみたら『やって欲しいのはそれじゃない』って顔をされた」って人は、ぜひこうやって聞いてみてください。
さて、ではなぜ「確認」をした方がいいのでしょうか。
それは家事の担い手には「段取り・手順」があるからです。 「ごはんを作ったら、その後にお風呂の準備をして、洗濯機も回したいからお風呂入れてる間に畳んでおかないとだし、そうしたら食器洗いは。。。」と言うように。 なのに、その段取りの中にない「トイレ掃除」を「やっておいたよ!」と言われてもその人の家事は何一つ楽にはならないのです。
「うちの夫、家にいたら家事してくれるんだけど。。。」とせっかく家事シェアしているはずなのに、いまいちピンと来てない場合。がんばった家事が効果的なポイントをはずしていることがあります。
「察して」ポイントを狙いにいくよりも、「このあと、やろうと思ってることって何?」と聞いてしまったほうが早いし間違いありません。
▶ 家庭内家事ギャップを埋めていこう
もしも家庭内家事ギャップが大きいな、という場合。 大切なのは、家事時間の短い方がどれだけ家事をがんばれるかではありません。
家事の担い手からどれだけ家事を巻き取ることができるか、が大切なのです。
荷物が重たくてつらそうな人を前に、違う荷物を拾ってきて「ほら! こっちだって結構重たいんだよ!」と主張する人はいません。でも、家事や育児においてはそうした現象が度々起こってしまいます。
荷物が重そうな人がいたら、その荷物を降ろさせて肩代わりしますよね。ましてやその荷物は、家族みんなの荷物なんです。
家事シェアにおいても、そうしたほんの少しの気遣いがあるかないかが大きな差を生みます。
▷ 小さな変化を起こすためのヒント
ここまで読みすすめていただき、ありがとうございます。
さいごに、小さな変化を起こすためのヒントをお伝えしたいと思います。
\小さな変化を起こすためのヒント/
自分が増やしているかもしれない「家事のマイナス」を生活の中で意識してみる。
家族がそれぞれ、家事のマイナスに敏感になるだけで大きな時短家事になります。生活の中で気がつくことが増えると、本当に助け合いが楽になるし、イライラが減ってご機嫌でいられます。